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新聞日記

新聞から世界を考えてみる

藤原伊織「ダナエ」

私にとって小説の世界は、異次元。小説を通じて、さまざまな世界を見る事が出来るなんて、とてもワクワクする。もちろんテレビなんかのドキュメンタリーも好きなのだけれども、それとは違う。ドキュメンタリーは、基本的には「事実」を積み重ねて番組を作成している。しかし小説では、すべてが「事実」である必要なんかない。その世界で起こるかもしれない、あるいはすでに起きていることが、どんどん展開されていく。しかしそうはいっても、小説はすべてが空想の世界でもないのだ。作者は、しっかりと取材をしてくれている。物語の本筋はフィクションでも、舞台装置はしっかりとノンフィクションだったりするから、もしかしたらドキュメンタリー番組よりも誠実なのかもしれない。

さて、「ダナエ」。舞台は画廊で起きた事件から始まる。画廊なんて、私には入ったことが無いのだけれども、この小説の描写で十分なような気がした。あっ、きっとそうなんだろうなって。そしてキュレーターなんて資格。少し前に、これを調べて事があったから、物語とは関係ないけれど、懐かしくなった。また萩原朔太郎の「乃木坂倶楽部」の一節が紹介されている。これには正直、ドキリとしてしまった。なんとも、小説を読みながら、ドキドキさせられる。これは私に原因があるのか、いや作者が上手いのだろう。

他にも「まぼろしの虹」と「水母」が収録されている。「水母」は、なんだか切ない物語でした。しかし、なんだろう。切ない物語を読むと、すこし元気が出てくるのです。そう、後悔しても、なにも始まらないのだって思うから。

ダナエ (文春文庫)

ダナエ (文春文庫)